R:凡の風「塩ラーメン」を食す

凡の風「塩ラーメン」

アートとラーメンの批評をするという珍妙なこのブログ。早くもというべきか、ようやくというべきか、記事の数が二〇本を数えました。厳密な論理性や学問的な裏付けなどは一切気にせず、筆の進むままに書き連ねていますので、話題が飛んだり、論理が破綻したりしている箇所も随分あると思います。ですがそれでよいのです。まずは書くこと自体が目的ですので、当分はこのままの方針で。徐々に体裁を整えてゆければよいということにしておきます。言葉で考えることの大事さが身にしみて感じられた三〇代男性の、ささやかな実験です。

さて久しぶりに、当ブログの二大テーマのひとつであるところのラーメンです。お腹の具合にまだ若干の不安が残るため、大好きなこってり系ではなく、胃にやさしそうな一杯を選びました。お邪魔したのは「凡の風」さんです。事前に簡単に情報を集めてみると、あっさりとした塩ラーメンが売りのご様子。今の気分と体調に、まさにおあつらえむきです。

店舗の様子は、いかにも最近のラーメン屋さん。清潔感があってスタイリッシュです。店内の空間に厨房がV字型に突き出ていて、その片側がカウンター席、反対側はテーブル席が設けられています。待合のスペースが広くとられていますが、広すぎるのと見通しがよすぎるのとで居心地はあまりよろしくありません。さらに、会計は食券制なのですが、券売機の位置がわかりづらく迷います。席に着いてしまえば気にならなくなるのですが、どうも空間設計がうまくいっていないような印象です。

肝心のラーメンは、まずは期待通りの見た目です。黄白色のスープに表面に、白ごまと、煌めく透明な脂が浮かびます。ひとくちすすると、舌の先にじんわりと染みこむような感覚があります。鰹節ににた酸味と旨味を感じさせつつ、全体にさらりと広がるコク。かすかに感じられるコラーゲンの粘り気。そういえばメニューには「魚介+豚骨+鶏」と書いてあった気が・・・。失念しましたが(テーブルにメニューが置かれていないのでじっくり見ることができなかったのです)、ならば納得の多重奏といったところでしょう。塩分をしっかり効かせて味の厚みを増しているのは評価できるポイントです。ですが、味のバランスを重視した結果、印象を薄れさせてしまった感も否めません。

麺はやや角張った中細麺。よく見る黄色いタイプのストレートです。残念ながらこの手の麺は、安っぽくて好きではないです。食べてみると、予想通り、ほとんど旨味がありません。旨味がないだけならば、スープの味を邪魔をしないための配慮なのかもしれないと解釈することもできたのですが、風味が致命的です。いかにもたっぷりかん水を使ったという香りが、噛む度に鼻に立ちのぼってきます。せっかくバランスよく仕上がっているスープも、これで台無しです。

具にはチャーシュー、メンマ、海苔、細長くきざまれた長ネギが添えられています。ごくごく普通で、特筆すべきことはありません。チャーシューの見た目は、よく見る丸められたものとは違い、バラ肉を薄切りにしたそのままの形で一瞬期待しましたが、味はごく平凡。メンマは一般的なものよりも味が数段薄いもの(あるいは味抜きをしたもの)が載せられています。やはりスープの味を邪魔しないための工夫なのでしょうが、そこまでするならいっそのことメンマを載せなくてもよいような気もします。(追記7/11:ごくごく普通の煮卵も載っていました)

全体としては上品で、うまくまとまった一杯とは言えます。個人的には、やはり麺がよくなかった点が気がかりですし、いまいち特徴のはっきりしないスープを惜しく思います。結局のところ、並みの印象です。病み上がりのお腹にはやさしかったので、それでよしとしておきます。

凡の風 北海道札幌市中央区南8条西15丁目1-1 ブランノワールAMJ815 1F 011-512-2002

*ラーメンの画像は撮り忘れました。反省。