A:釜谷美由紀展 -紐帯- (ギャラリーミヤシタ)

釜谷美由紀展 -紐帯- (ギャラリーミヤシタ 2011/8/25-9/11)

ことあるごとに異常気象だ、温暖化だと騒がれる昨今。今年はその騒動がぴたりとあてはまるような夏でした。けれどお盆を過ぎてみれば、秋の気配が感じられるようになるのはいつもの通り。暑い日はまだまだあったとしても、はや鈴虫が鳴いていたり(!)、雪虫が飛んでいたり(!!)して、夏も終わったのだという実感が日ごとに増してゆきます。

アートの世界を眺めてみれば、不況のあおりと震災の影響をまともに受けて中止された展覧会があったりはしたものの、学芸員ソフトパワーを発揮して意欲的で意義深い企画を続々と生み出しているし、ヨコハマトリエンナーレ2011をはじめ各地の芸術祭のプレ企画なども目白押しで、むしろこれからますます熱くなってくる気配さえ感じられます。

札幌の状況はと言えば、相変わらずビエンナーレ関係が迷走していて沈鬱な空気を漂わせているものの、どのギャラリーにおいても絶え間なく展覧会が開催されている様子を見るかぎり決して冷えてはいない。「ギャラリー門馬」や「ギャラリー創」は、道内外を問わず先鋭的な仕事をする作家たちを積極的に紹介し続けているし、その他でも地元作家の円熟や新進ぶりを楽しむことができるます。煮え切らないと言えなくもないけれど、ほどよく温かい状況であると好意的にとらえておくことにしましょう。

「ギャラリーミヤシタ」で拝見した釜谷美由紀さんの個展は、まさにほどよく温かいものでした。カラーとモノクロが混在した写真の展示は、いかに鑑賞者を飽かせないかという情熱が傾けられていて、独特の熱を帯びています。

例えば横浜、旭川、沖縄といった撮影地を書いた紙を小振りの石に貼って、床に置いておくキャプションの見せ方、あるいはインスタレーションのように渦巻き状に石を配列して、中心に2Lサイズほどの写真を置くような見せ方に、それが表れています。壁に飾られている写真の配置にも工夫が凝らされており、あるものは整然と並べて飾られ、またあるものは厚みも縦横比も異なる木枠に貼り付けられた写真が一見ランダムに組み合わされてひとつのオブジェを成すように飾られています。作家は旺盛な実験精神の持ち主であり、エンターティナーのようです。

反面そうした工夫が、個々の写真から意味なり、物語なりを読み取ることの妨げになっていることは否めません。しかしながら、組み合わされた個々の写真をじっくりと見れば意味や物語が浮かび上がってくるのかと問われれば、そうでもなさそうです。むしろはじめから、意味や物語などを意識して撮られた写真ではないと理解するのがよいのかもしれません。

展覧会の副題には「紐帯」とあり、何かと何かの結びつきが暗示されてはいますが、やや過剰な演出と、やや漠然としすぎた内容の写真たちを前にしては、このコンセプトを導き出した理論が錯綜しているであろうことが想像されるだけで、具体的に何と何が結びついているのかということについて想起するところまでは至りませんでした。

展示に凝らされた工夫は評価したいと思います。実際見ていて、最後まで飽きませんでした。願わくばその工夫が、写真の内容と合致するものであってほしいです。互いが一人歩きし、平行線で終わってしまっては、結果として何も語らしめることができません。