R:麺や亀陣「鶏白湯塩ラーメン」を食す

麺や亀陣「鶏白湯塩ラーメン」

なんと、二ヶ月ぶりの「R」の記事です。この夏の暑さのせいで胃腸が弱っていたとはいえ、こんなことではいけません。しかしいざラーメンを食べに行こうと思っても、なかなか食指をそそるお店の情報が見当たらないのも事実(単に情報に疎いだけという話もありますが)。何の手がかりもなしに初めてのお店に飛び込む勇気もなく、二の足を踏んでいていたという事情もあります。

ありがたいことに今回は、知人からの情報提供がありました。昨年末に開店したばかりで、なかなかの実力店とのこと。早速お邪魔しました。

亀陣さんの謳い文句は「化学調味料無添加」のスープと「自家製麺」。メニューの裏には健康志向、自然志向への傾倒を示すコンセプチュアルな文章が綴られていて、店主の生真面目さがひしひしと伝わってきます。しかし問題はあくまでもラーメンの出来。三種類の基本メニュー(鶏清湯、鶏白湯、つけ麺)に加え、限定メニューの担々麺が用意されていますが、ここは好物の鶏白湯の塩で様子見です。

見た目は極めて普通のラーメン。白湯の塩のわりにはスープがやや茶色味を帯びているかな、といった程度です。ぎらぎらした脂が浮いているわけでもなく、具や薬味に凝っているわけでもありません。正当派と言ってよいでしょう。

スープをひとくち。白湯なので鶏ガラに違いないのですが、鶏の旨味に加えて魚の旨味が強く感じられます。茶色味は魚の出汁(和出汁ということですが魚の種類は明かされていません)を加えているせいのようです。鶏と魚の二重奏で、しっかりとコクがあります。塩分も適度。鶏ガラからコラーゲンがたっぷりと出ていて、舌にねっとりとからみつく感触があります。

麺はまるで博多系のラーメンのような細麺です。ただし博多系が概して丸麺であるのに対し、こちらは角麺。舌の上でコロコロと転がる感触が絶品です。一本一本の離れがよく食感も上々。噛むと最初はムチッとした弾力を感じさせ、やがてホロリと噛み切れます。この麺を食べると、博多系の麺のあのブツリと切れる感触がいかに不自然であるか思い知らされるでしょう。また鼻腔につんとくるかん水の臭いも最小限に抑えられていて不快感はありません。スープの味の邪魔をせず、とてもよく馴染んでいます。素晴らしいと思います。

具はチャーシュー(豚と鶏の二種)とメンマ、キクラゲ、ネギ(小口の細ネギと白髪ネギ)です。いずれもスープの味を濁らせるような強い味付けは避けられています。徹底しています。豚のチャーシューは下茹でした豚肉に軽く焼き目をつけたものです。厚めに切られ、しっかりとした食感と肉の味が残されています。ややぱさつくのが気になりますが、許容範囲でしょう。珍しい鶏のチャーシューも、やはり下茹でして焼き目をつけたもの。ほのかにウイキョウの香りをつけた、中華風の仕上げです。しばしばスープの邪魔者となるメンマもほどよい味つけで、食感もしっかりとしている丁寧な出来。細切りにされてキクラゲは、味つけがされていないので最初は特に感心しなかったのですが、麺と絡まると絶妙な食感となります。やや過剰に思えた白髪ネギも同様です。なるほどキクラゲと白髪ネギは、麺のための具材なのですね。これには感嘆しました。

全体的に見ると、味の面では突出したものはないけれど、細部までよく考えられていてバランスがよく、美味しく食べさせるための工夫も凝らさている、真面目で非常に完成度の高いラーメンだと思いました。特に麺と具の取り合わせは絶妙です。あえて難点を挙げるならば、底の方がスープの味が濃いということと、底に魚粉が溜まっていて食べ進めるうちに舌触りがザラザラとしてくることでしょうか。つけ麺ブーム以来、魚粉の使われ方が安易な気がしますので、ここをなんとか解消していただきたいところです。

どうやら看板メニューであるらしい「清湯」の方も、激しく気になります。近いうちにこちらも試してみることにします。

麺や亀陣 北海道札幌市東区北47条東8丁目1-1 47ビル 1F