A:丹羽シゲユキ展ーHEAVENー(ギャラリー創)

丹羽シゲユキ展ーHEAVENー(ギャラリー創 2011/8/24-9/4)

休みの日を利用して、気になっていた四つの展覧会を見ました。そのうちのひとつ、「ギャラリー創」で開催中の丹羽さんの個展について書きます。

丹羽さんは札幌出身の方ですが、京都精華大学で学ばれたという経歴を聞くと、それだけでなにやら雅で華やかなものを作られているのではとの先入観をもちます。まさに京都マジック。いや、ここは作品に敬意を表して「はんなり」したものと言うべきでした。すなわち「花なり」と。

会場には陶器で作られた蓮華のオブジェが並べられています(一部、カップのような器の作品もあり)。大半がマットな白い釉薬で色づけがされていて、非常に上品な印象です。この白い色づけが、作品のディテールやフォルムへと意識を誘導するためのものであることは間違いないでしょう。蓮華は艶めかしい曲面と鋭利な縁の花弁がひしめき合うように形成されていて、その形状が生む陰影が白い陶体に落ちて、作品の造形美をいっそう際立てるのです。

ディスプレイの方法はやや演出過剰。濃い茶色の木枠の上面に透明なアクリルをはめ、その上に作品を置いて浮遊感を演出しています。木枠の内側の底面、すなわちアクリルから透けて見える対面はピンクや黄緑色に塗られ、作品の白色を鮮やかに浮かび上がらせていますが、ピンクや緑色の反射が中途半端であるのと、アクリルに反射する光が邪魔になるのとで、いまいちでした。どうせならライトボックスなどを用意して、透過光で演出したほうがよかったのではと、余計なことを考えます。

蓮華をモチーフにしつつも、無駄にその有機性にすり寄らない姿勢は好ましく思いました。あくまでも陶を出発点として、陶の文法でもって事物を解釈してゆくという一貫した意志の表れなのだと思います。ただし蓮華というモチーフへを採用した動機が、単にディテールやフォルムへの関心のみだったとするならば寂しいですね。「HEAVEN」という副題にも後づけの響きを感じます。

とはいえ、一部の作品には、花弁の内側に蓮の種子のような模様が描かれているものがあり、これをモチーフへの視線の深化ととらえるならば、展望は明るいのかもしれません。

追記:このあと、「ギャラリー門馬」と「ギャラリーレタラ」へもゆきました。杉吉貢さんの曼珠沙華彼岸花)の作品はなかなか新鮮な体験でしたが、その他は特筆するところがありませんでした。