A:「my DO YOU」渡会純价展 「にっぽんの童謡」展 (大丸藤井セントラル スカイホール)

「my DO YOU」渡会純价展  「にっぽんの童謡」展 (大丸藤井セントラル スカイホール 2011/6/21-26)

肌寒い日が続いています。上着を一枚羽織って出かけるのがちょうど良く、動いて暑くなれば脱げばいい。僕はこのぐらいの気温が好きですよ。しょっちゅう寝冷えしてしまうので、慢性的に風邪気味なのは困りものですが。

気温の変化に対する日本人の神経質さはなんなのでしょうか。天気予報や温度計をみては一度二度の変化に一喜一憂し、「去年の今頃はもっと暑かった(寒かった)」と挨拶がわりに確認しあう。農耕民族だからだとか、四季の変化が激しい風土だからだとか、もっともらしい理由づけはできるのかもしれませんが、それ以上に、快適であることが当たり前だと思っていて、そこからずれることに非常に強いストレスを感じるという、純粋な現代病であるような気もします。だからいつも、快適さからのズレを示す相対的な指標としての気温を気にしているのでは、と。

今回は札幌のど真ん中、大丸藤井セントラルさんの「スカイホール」にお邪魔しました。拝見した渡会純价さんの作品は、明らかに快適な部類のものと言えるでしょう。穏やかで、暖かみがあります。外国の風景にインスピレーションを受けた作品が多いのでしょうか。その地で出会った人、見たもの、聞いた音楽などが記号化されながら並列的に画面のなかに散りばめられて、ひとつの物語を成しています。ありきたりな言い方ですが、絵本の挿絵のようです。この物語性は大きな特徴でしょうし、作家自身も自覚的にそう構成しているに違いありません。「my DO YOU」展と併設するかたちで開催されていた「にっぽんの童謡」展において、様々な童謡をテーマとした作品を展示されていましたが、すでに成立している物語の視覚化という方向に向かうのも、ごくごくわかりやすい道理です。

エッチングの技法による繊細な線や、色面に表れる微細なかすれは味わい深いものがあります。破天荒さはなく、ひたすら心地よい、まさに夢物語のような世界観です。ただ二、三点拝見すれば十分です。会場には五〇点あまりの作品が展示されていましたが、印象に残っているのは、人物の顔が単純な線で描かれていた最初の二点ぐらいです。総じて単調でしたし、フライヤーには「童謡の制作から人間回帰にとりつかれ」たとありますが、物語を視覚化することに何か特別な意味があるようには感じられませんでした。物語を客観視されすぎているのではないかとも思えますね。タッチや彩色や画面構成など、技法的な部分に個性は発揮されているものと思いますが、物語と作者の主観との距離観がありすぎるために取っかかりがなく、むしろ物語のなかで遊べないというもどかしさを感じるのかもしれません。

申し訳ないのですが、強い印象を受けるには至らず、そそくさと退散させていただきました。その足で、夏のバーゲンに乗じて、薄手の上着でも買いに行こうかと。決して快適ではない季節をなんとか楽しむようなやり方ほうが、やはり僕は好きなものですから。


このブログをはじめて一月が経ちました。「A」14本、「R」1本(!)、「O」1本の記事を書き、なんとなく僕の好みだとか作品の見方だとかが浮き彫りになってきたような気がします。まだまだ、鑑賞者としても執筆者としても未熟ですが、この先がどこかに通じると信じて続けさせていただきます。(ご覧いただいているかどうかわかりませんが)作家の皆様、(いるのかどうかわかりませんが)読者の皆様、どうぞお付き合いください。