A:下沢敏也[陶のオブジェと小品展](ギャラリーレタラ)

下沢敏也[陶のオブジェと小品展](ギャラリーレタラ 2011/6/4-27)

友人と会う約束で円山に出かけたついでに、「レタラ」さんへお邪魔しました。テナントビル「MOMA PLACE」の2階にある昨年オープンされたばかりのギャラリーで、現代アートやデザインの作家のための場として用意されたとのこと。なるほど、近くには「CAI」もありますし、いかにもアーティストたちが好みそうな立地です。個人的な感想としてはおしゃれすぎです。靴の汚れを落としてからでないと立ち寄るのがはばかられる、そんな雰囲気です。

「レタラ」で開催されていたのは、先に見た彫美での「抽象彫刻30人展」へも出品されている下沢敏也さんの個展です。作品は大好きです。彼が形づくるのは、大地の奥底のひめやかな力が、ゆっくりと立ちのぼり形を成したかのように屹立する造形。あるいは生命を包み込むかのように内へ収斂してゆくかのような造形です。いずれも生命の往還や自然の聖性への畏敬の念をはらみながらも、不可視の力を可視化して、その本質を暴き出そうとする意志を感じさせます。そのためか作品は、ときに暴力的に、ときにグロテスクにすら見え、反面、強い引力でもって視線を惹きつけるのです。作品の造形は抽象的ですが、仕事自体は非常に具体的であるように思えます。

ただ本展の意図は、そういった作家としての、大上段に構えた本来の仕事からは、やや逸れているようなものでした。ギャラリーの壁面に飾られていた作品は「包み込む」造形を小品化したものでしたが、「陶のオブジェ」と題されているとおり、大半は花瓶のような器の作品です。下沢さんが話されているのを盗み聞きしたところ「器も作れるというところを見せたかった」とのこと。いや、でも、この器に花を活ければ、ひとつの生命が器にもたらされ失われてゆくという往還の構造を提出できるでしょうから、こうした器を作ることも下沢さんの仕事のバリエーションと考えられなくもなさそうですね。中に土を入れて、花を植えればもっとよいかもしれません。なるほどそう考えると、やや商品めいて見えていた器たちも、俄然魅力的に思えてきました。ちなみに本展では展示作品を購入することもできます。お値段は50000円〜70000円ほど。僕もひとつぐらい欲しいかも・・・

僕が行ったのは、ちょうどオープニングパーティーがたけなわのときのようでした。顔だけ存じ上げている作家さんたちが大勢いらっしゃいました。阿部典英さん、渡會純价さん、端聡さんなどなど。そんななかに入ると、僕は明らかに浮いています。ブログで失礼なことを書いている手前もあります。肩身の狭い思いをしつつ、ひととおり作品を拝見して、逃げるように帰りました。